アトピーの基礎知識
アトピー注射治療の基礎知識と注意点|種類・効果・副作用・費用を解説
「注射治療を始めるべきか迷っている」「副作用が心配でなかなか踏み出せない」「金銭的負担が気になる」そんな不安を抱えていませんか?デュピクセントなど4種類の注射薬の特徴や効果、副作用について一緒に理解を深めていきましょう。正しい知識を身につけて、あなたに合った治療法を見つけていきませんか?
目次
アトピー注射治療を検討中のあなたへ|同じ悩みを抱える仲間の声
「注射治療を始めるべきか悩んでいる」「副作用が心配で一歩踏み出せない」。アトピーの症状がひどくて注射治療を検討する多くの方が、同じような不安や迷いを経験しています。
アトピヨアプリには、実際に注射治療を経験した方々からの貴重な声が投稿されています。「少しずつ良くなってきてる☺️☺️◯◯◯◯効果でてる☺️☺️」「明日◯◯◯◯の話を聞きに病院に行きます。どうするかはまだ分からないけど、、、」など、リアルな体験談が集まっています。同じ悩みを抱える仲間の経験は、あなたの不安を和らげ、前向きな一歩を踏み出す勇気を与えてくれるかもしれません。ぜひ参考にしてください。
アトピー注射治療とは?
アトピー性皮膚炎の注射治療(生物学的製剤)は、皮膚の炎症・バリア機能・かゆみに関わるIL-4、IL-13、IL-31などのサイトカイン(体内で炎症を起こすシグナルを送る物質)の働きを抑えることで、症状を改善する治療法です。これらのシグナルが過剰に働くと、湿疹や強いかゆみが続くため、その流れを抑えることで皮膚の赤み・乾燥・ぶり返しが落ち着きやすくなります。この注射治療は、保湿や外用薬を正しく使っても症状の改善が不十分で、湿疹やかゆみが続き、日常生活に支障が出てしまう中等症〜重症の方に検討されます。
重要なのは、この治療が外用療法に「置き換わる」ものではなく、外用療法を行ったうえで必要に応じて「併用を検討する」追加的な治療であることです。アトピーの新薬として期待される注射薬ですが、すべてのアトピー患者さんに一般的に使うものではなく、外用療法だけでは十分な効果が得られない方に限られた選択肢となります。

アトピー注射薬はどんな種類があるの?
2025年11月時点で、日本で使用できるアトピー性皮膚炎の注射薬(生物学的製剤)は4種類あります。デュピクセント、ミチーガ、アドトラーザ、イブグリースの4つで、それぞれ作用の仕組みや対象年齢、投与間隔が異なります。
| 薬剤 | 特徴 | 対象年齢 | 投与間隔 |
| デュピクセント | 炎症・バリア機能・かゆみに関わるIL-4およびIL-13のシグナルを阻害する生物学的製剤。日本で最初に承認されたアトピー性皮膚炎の注射薬。 | 成人 | 2週ごと |
| 生後6カ月以上の小児 | 体重に応じて2〜4週ごと | ||
| ミチーガ | かゆみに関わるIL-31受容体Aを阻害する生物学的製剤。 | 成人および13歳以上の小児 | 4週ごと |
| 6歳以上13歳未満の小児 | 4週ごと(用量は成人及び13歳以上の小児と異なる) | ||
| アドトラーザ | 炎症・バリア機能・かゆみに関わるIL-13に選択的に結合し、その働きを抑える生物学的製剤。 | 成人 | 2週ごと |
| イブグリース | 炎症・バリア機能・かゆみに関わるIL-13に結合してその作用を抑える生物学的製剤。 | 成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児 | 2週ごと(状態により4週ごとへ延長可) |
※年齢区分について:医療用医薬品では、厚生労働省の「添付文書等の記載要領」に基づき、15歳以上を「成人」として扱います。本表の「成人」は この区分に基づきます。
これらのアトピー注射の種類の中から、どの薬剤が自分に適しているかは、年齢、症状の程度、これまでの治療歴などを考慮して決定されます。必ず医師と相談して決めることが大切です。新薬も含めた選択肢が広がったことで、より多くの患者さんに適した治療が可能になっています。
アトピヨユーザーの使用薬剤データ
よく使われている薬剤のランキング
薬剤種類別の出現割合(2025年1月現在)

アトピー注射の効果と副作用|両面を理解する
「本当に効果があるの?」「どれくらいで良くなるの?」といった疑問を持つ方も多いと思います。アトピー性皮膚炎の注射治療では、皮疹(湿疹)の改善、かゆみの軽減、睡眠の質の向上などが期待され、多くの患者さんで症状の改善が報告されています。ただし、一部の方には目のかゆみ・結膜炎、注射部位の反応などの副作用がみられることもあります。治療を検討する際は、効果と副作用の両方を理解したうえで選択することが大切です。

期待できる効果
効果のあらわれ方には個人差がありますが、かゆみに関しては注射薬の投与後、比較的早期に改善がみられることがあります。一方で、皮疹の改善や全体的な治療効果の判定は、多くの薬剤で投与開始から16週頃を目安として行われます。アトピヨアプリに寄せられる口コミでも、「◯◯◯◯使用して3週間後💪夜中や汗をかいた時等ボリボリ掻きむしるのは変わらないけど、血や汁が出るまでかかなくなったし、ほんとに良くなった👏」「◯◯◯◯2回目から数日後。劇的に良くなっている。かゆみも軽減、赤みが減り肌の色が白く見えるようになてきた。色素沈着もほんのり色が薄くなったような気がする」などの投稿もみられます。効果には個人差がありますが、症状の軽減を実感する方もいます。
主にみられる副作用について
これらの注射薬では、注射部位の赤み、腫れ、痛み、かゆみなどの局所反応や、結膜炎などの目の症状がみられることがあります。また、薬剤によって程度は異なりますが、風邪のような上気道症状(のどの痛みや鼻水など)や、血液検査で見つかる好酸球の増加が報告されています。このほかにも薬剤ごとに様々な副作用が知られています。新しく出てきた症状や、いつもと違う症状がある場合には、自己判断で様子を見ず、必ず主治医または看護師、薬剤師にご相談してください。
過敏症反応(アナフィラキシーを含む)について
注射後にまれに、過敏症反応(アナフィラキシーを含む)が生じることがあります。ふらつき、息苦しさ、動悸(心拍数の上昇)、めまい、吐き気、嘔吐、皮膚の赤みや強いかゆみ、関節痛、発熱、血管性浮腫(顔や唇の急な腫れ)といった症状がみられた場合には、次の受診日を待たず、速やかに医療機関を受診してください。これらの反応は、注射直後だけでなく、数時間経ってから出現する場合もあります。少しでも気になる症状があれば、早めに主治医へご相談ください。
アトピー注射はいつまで続ける?治療期間の目安
アトピー性皮膚炎に対する注射治療では、投与開始から16週目(約4ヶ月)が最初の大きな評価ポイントになります。この時点で皮膚症状の改善やかゆみの変化を確認し、治療を継続するかどうかを医師と相談して決めます。その後の治療期間は、症状の安定度や生活への影響、再燃しやすさなどによって大きく変わります。数カ月で状態が安定する方もいれば、良い状態を維持するために数年単位で継続する方もいます。「何回打てば終わり」という決まった回数はありません。定期的に皮膚の状態を評価しながら、ご自身のペースで無理なく続けることが大切です。
アトピー注射を受けられる条件
アトピー性皮膚炎の注射治療(生物学的製剤)を受けるためには、以下のような基準を満たす必要があります。これは「注射が本当に必要かどうか」を正確に判断するための基準です。
条件1)アトピー性皮膚炎と医師により診断されていること
自己判断ではなく、医師による確定診断が必要です。アトピー以外の湿疹では、注射治療の効果が得られない場合があります。
条件2)標準治療を行なっても十分な改善が得られていない場合
ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬(プロトピック軟膏)などの抗炎症外用薬を適切に使用しても改善が不十分な場合、必要に応じて行われる内服治療を併用しても症状が十分にコントロールできない場合には注射治療が検討されます。なお、過敏症や副作用のためにこれらの外用薬の継続が難しい場合も、適応に含まれます。
条件3)疾患活動性が一定以上であること
IGAスコアやEASIスコア、病変の広がり、かゆみの強さなどを参考に、症状の程度が一定以上と判断された場合に、注射治療の適応となります。
アトピー注射と外用療法の併用
生物学的製剤による注射治療は、外用療法(外用薬と保湿剤)と併用して行うことが基本とされています。アトピー性皮膚炎の診療ガイドラインでも、注射治療は外用療法を継続しながら行うという考え方が示されています。
このため、日々のスキンケアも大切で、朝晩の保湿や入浴後の速やかな保湿剤塗布など、基本的なケアを続けることが治療を安定させるうえで重要になります。アトピヨアプリでは、注射と外用療法の両方を記録・管理でき、治療の全体像を把握しやすくなります。

注射とスキンケア(+日常気を付けている事)を両方実施しているユーザーの声
「顔の赤みが常に慢性的にある、保湿剤は毎日塗っていて、アトピー新薬◯◯◯◯3ヶ月目。かなり効果を感じる。大分痒みは落ち着き、肌質も改善」ケェケェ🐬さん(30代女性・アトピー歴20年超)
「◯◯◯◯9回目打ってから8日たった。二の腕の色素沈着減ってきた。乾燥してて、関節がたまにかゆい。保湿は欠かせない」すーさん(30代女性・アトピー歴20年超)
「◯◯◯◯ 使う前は全然ステロイド効かなかったのに、使い始めてからステロイドもすぐ効くようになった気がする」なすちゃんさん(20代女性・アトピー歴20年超)
アトピー注射はいくら?治療費用の目安
アトピー性皮膚炎の注射治療にかかる費用は、使用する薬剤や投与量によって異なりますが、健康保険の3割負担の場合、薬剤費だけで月に数万円程度かかります。これに診察料や処置料などが加わります。費用は高額に感じられますが、利用できる公的な補助制度を活用することで、自己負担を抑えられる場合があります。
●高額療養費制度
医療費の自己負担額に上限を設ける国の制度です。上限額は、年齢(70歳未満・70歳以上)と世帯の所得に応じて決まります。例えば70歳未満で、年収の目安が約370~770万円の所得区分の場合、1ヶ月あたりの自己負担上限額は約8万円です。さらに、直近12ヶ月で3回以上この制度を利用すると「多数回該当」となり、4回目以降は上限額が約4.4万円に下がります。
さらに、加入している健康保険(企業の健康保険組合、公務員共済など)によっては、独自の「付加給付制度」を設けている場合もあります。この制度がある場合、法定の上限額より自己負担額がさらに軽減されることがあります。そのため、加入中の健康保険組合に付加給付制度の有無を確認しておくことをおすすめします。
なお、事前に健康保険組合に「限度額適用認定証」を申請しておくと、医療機関での窓口支払いが、あらかじめ上限額内に収まるため便利です。
●自治体の医療費助成制度
市区町村が独自に実施している医療費助成制度です。「子ども医療費助成」や「ひとり親家庭等医療費助成」などが代表例で、対象となる方は自己負担が数百円~無料になる場合もあります。ただし、対象年齢、所得基準、助成内容などは自治体によって大きく異なります。そのため、お住まいの市区町村の担当窓口(子育て支援課、保険年金課など)で、利用できる制度の有無を確認することをおすすめします。
●医療費控除(確定申告)
1年間(1月〜12月)に支払った医療費の合計が10万円(または総所得金額の5%のいずれか低い方)を超えた場合、確定申告をすることで所得税や住民税が還付・軽減される制度です。会社員の場合でも、年末調整では医療費控除の手続きはできないため、ご自身で確定申告を行う必要があります。注意点として、医療費控除の対象となるのは「実際に自己負担した医療費」だけです。そのため、高額療養費制度や自治体の医療費助成などで補填された金額は、支払った医療費の合計から差し引いて計算する必要があります。
これらの制度を利用できるかどうかで、実際に負担する金額は大きく変わります。治療を始める前に、ご自身の、加入している健康保険組合や、お住まいの自治体で利用できる制度を確認しておくことをお勧めします。
まとめ
アトピー性皮膚炎の注射治療は、従来の外用療法や内服療法で十分な改善が得られない場合に、新たな選択肢となる治療です。デュピクセントをはじめ、複数の注射剤が利用できるようになり、患者さんごとの症状に合わせた治療選択が可能になってきました。
皮疹やかゆみの改善が期待できる一方で、注射部位反応や結膜炎などの副作用がみられることもあります。多くは軽度ですが、気になる症状があれば早めに主治医または看護師、薬剤師へ相談することが大切です。治療期間には個人差があり、まずは医師と相談しながら、ご自身に合ったペースで治療を進めていくことが重要です。
一朝一夕にはいかないアトピー治療です。アトピヨアプリで仲間と情報を共有しながら、前向きに治療に取り組んでいきましょう。
| 【この記事の監修者】 宮川明大 Akihiro MIYAGAWA(アキヒロ ミヤガワ) 皮膚科専門医。大学病院ではアトピー性皮膚炎の外来や入院診療を担当し、多くの患者さんのお悩みに向き合う。 現在は美容皮膚科タカミクリニックに勤務し、ニキビや毛穴、しみ・しわなど、肌のあらゆるお悩みに寄り添う。 |
監修者情報
赤穂晶子
Akiko AKO(アキコ アコウ)
薬剤師。大手ドラッグストアや調剤薬局で調剤業務・介護業務に従事。皮膚科・小児アレルギー科・精神科・内科等の様々な症例を経験。調剤経験を経て、アトピヨ合同会社参画後は、コンテンツ作成と運営をリード。
赤穂亮太郎
Ryotaro AKO(リョウタロウ アコウ)
プログラマー。工学修士。公認会計士。
アトピー、喘息、鼻炎という3つのアレルギー疾患の経験から、患者会でボランティア活動に従事。アトピーの方へのヒアリング、薬剤師である赤穂晶子の見解、プログラマーの指導・監修を受け、自ら本アプリを開発。